吉増剛造さんについて⑱
吉増剛造さん関連の書物で、よく読み返す物の一つに『吉増剛造──黄金の象』がある。
冒頭、吉増剛造さんと大岡信氏の対談がある。その中で、安東次男氏の俳句
そもそものはじめは紺の絣かな
について語られているが、この句は非常にわたしの心に攻め入ってくる。
吉増剛造さんは、"俳句を超えた、とんでもない精神、危機の精神の表れ"と仰っている。
わたしは、この句を見た瞬間頭を殴られたような衝撃で、何年経っても事ある毎にこの句に立ち返る。それは何故か。
初めて吉増剛造さんの詩に触れた瞬間と同じ匂いを感じるからである。
理屈ではなく、感受するもの。
ささやかな言葉の下に奥深く掘り下げられた落とし穴があり、わたしたちは気づかぬうちに底へ底へと入り込んでいる。
あの暑い夏の日、わたしはわたしの包帯を発見したのである。