吉増剛造さんについて

吉増剛造さんについての個人的な記録

吉増剛造さんについて⑦

 

 

 

 

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ドアを開けると

絹の馬が

静かに燃えていた


ヒヅメを

自らの内部に

打ちつけながら

 

炎は

公衆電話と

小銭と

抱きあう二人を

海へといざなう


わたしは

メロンゼリーのなかで

自ら解凍する

 

わたしたちは、

そこに居たひとも

そこに居るけれど見えないひとも

 

馬の背にのり、

目をつぶる

 

いくども死んでいく

秋の胎児となって


絹の馬は

自分をほどき、燃やし


蚕の口から

再生される

 

美しすぎる この世界を

見ないことなんて

できない

 

 

 

 

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2017年9月1日20:30

札幌PROVO

吉増剛造×空間現代

 

 

 

20時前に入店すると、ざわざわとした空気のなかで、窪地のように静かな場所があった。

吉増剛造さんが、そこにおられた。

 

今まで幾度となく映像で見たお姿のどれとも異なる、いま、の吉増剛造さんが木の床に坐っていらっしゃる。

沢山のインクが入った小瓶と紙。

薄暗い店内で小さな灯りを点し、背をかがめ、銅板に向かっていらっしゃった。

 

わたしたちは遠巻きにして、そのお姿を見守っていた。