吉増剛造さんについて⑯
2020年4月30日に始まった吉増剛造さんのYouTube配信【葉書ciné】を初めて観て聴いた時、新しいエッセイを捲るような感覚だった。
吉増剛造さんの柔らかな声と呼びかけ。
"ごめんなさい"……
"ごめんなさいね"……
まるで初めて訪れる家の木戸を控えめに叩くようだ。
吉増剛造さんのカメラとマリリアさんの歌と背景から聞こえる子供たちの声……
[同時発話]の美しさ。
不思議な時間が流れる空間だった。
この【葉書ciné】の制作を担われている書肆吉成さんと言う札幌の古書店。札幌と言ってもどこにあるのか全く知らずに居て、たまたま入ったレストランの2階の窓からふと下を見ると、すぐそこの信号の横に青い看板「書肆吉成」が見えた。本当に驚き、又ご縁を感じた日だった。
本日、2021年11月11日(木)
最後から2番目となる【葉書ciné】を拝見した。
終盤には、吉増剛造さんが手書きの罫線が引かれている紙に向かわれていた。
「吉増剛造さんについて⑩」で、"文字のない罫線のような一生"と綴った言葉が現実になって現れ、驚きとともに今までの数々の偶然に感謝しつつ、来週木曜日の最終回を迎えたいと思う。